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『GOOD YAER』上映後トークショーに林海象監督、月船さららさんが登壇! 本作の前編にあたる次回作の構想も発表!?

2015年10月17日(土) レポート

10月17日、『京都国際映画祭2015』特別招待作品の『GOOD YEAR』がTOHOシネマズ二条で上映されました。
林海象監督の『GOOD YEAR』は、永瀬正敏さん、元宝塚歌劇団の月船さららさんが出演している短編三部作の第2話。舞台は山形の廃工場。家族を捨て、東京を捨て、すべてを捨てた女と孤独な元原発作業員の男の物語で、林海象監督が新天地、山形で生み出した新作です。
上映後には、浅越ゴエ司会進行の元、林海象監督、月船さららさんとのトークショーが行われました。

上映前、「20分の映画ですから!」と林監督自らが説明するという出来事が。トークショーではまず、そのことについて尋ねると、「あえて冒頭に言わないと、長編と思われて怒る人もいるかと思って」と林監督。実際、観客の方々に「長編と思っていましたか?」と浅越が尋ねると、思っていた方もちらほら。冒頭に説明して“正解”でした。

そして林監督に『京都国際映画祭2015』に初めて参加されてのご感想を尋ねると「20分の映画なのに選んでくださって嬉しいです。昨日、このTOHOシネマズ二条で黒澤明監督の『赤ひげ』を見たのですが、『赤ひげ』と同じスクリーンで自分の映画がかかったのは痺れるほどうれしいです」と率直に答えられました。
続けて月船さららさんにも『京都国際映画祭2015』のご感想を聞きました。月船さんは、10月15日に祇園甲部歌舞練場で行われたオープニングセレモニーにもご出席。「私は滋賀県出身で、高校は京都だったので、ゆかりのある地でこの映画が流れるのは嬉しいです」と語られました。

ここでスペシャルプレゼントが届いたと浅越、スクリーンに注目と視線を促します。
そこには主演の永瀬正敏さんからメッセージが。「『GOOD YEAR』観ていただいてありがとうございます。もしかしたらこの作品の前編か、後編の作品も今後、撮られるかもしれません。それもぜひ、『京都国際映画祭』で流していただければと思います。その時はぜひ、お邪魔したいと思います」とのお言葉がありました。

「永瀬さんのメッセージに前後編があるのではというようなお話がありましたが…?」と浅越。そこで林監督から、これから撮影される予定だという前編の構想が発表されました。本来は、別の作品として永瀬さんとの作品を撮ろうと思っていたと監督。
ところが、『GOOD YEAR』撮影中に永瀬さんから「前にお話していた映画は、この作品のお話なのでは?」と持ちかけられたそうです。

「もう全部しゃべっちゃおう」と、前編として構想している作品について、その軸となる出来事などもお話されました。『GOOD YEAR』で永瀬さんが扮する男の身の上がより詳しく描かれた前編のプラン。『GOOD YEAR』を「謎が多い作品だ」と話していた浅越は、「そんなバックボーンがあるなんて、20分では分かりませんでした!」と驚いていました。そして、「そういうことが分かるからこそ、このトークショーに意義が出てきました!」と、監督と月船さんとの時間に満足していました。

ただ、壮大なセットを作らないとならない前編は「すごいお金がかかる!」と林監督。浅越は「出資者の方はいらっしゃいませんか!」と呼びかけました。なお、林監督は『GOOD YEAR』は20分ですが、前編は60分を考えているので、二つ合わせたら80分の長編になるともお話され、その着想には笑いも起こりました。

月船さんのきれいな脚が印象的な本作品。「人魚」のモチーフもあり、それには「僕は人魚が好きなんですよね。人魚って水の象徴であり、不死の象徴でもあります。よみがえってほしい、水の中で失ったものが帰ってほしいという象徴でもあります」と語られました。月船さんの足に魚の尾ひれのようなものをつけるときには、なかなか際どい瞬間もあったようで、それについては“トークショーだけの話”で盛り上がりました。また、月船さんが横たわっているシーンでは、脚の配置や服のラインなど微妙な角度にもこだわったそうです。

林監督の現場は提案したことが即座に盛り込まれることが多く、「ライブ感があった」と月船さん。シナリオにない動きなども現場で生まれたそうです。「最初に永瀬さんの演技を見させてもらって。そしたらセットの中で動きたくなったんです。その動きで、男と女の気まずい、微妙な間(ま)などを表現したくなりました」。そんな月船さんを「この世の者とは思えないほど色っぽかった」と絶賛される林監督。「月船さんがご自分で選択して広い演技をされていたのもありがたかった」とも語られました。

そして、永瀬さんについても「(演技について)何も聞かない人」。機械を触っているシーンでは、台本にも「なんだか分からない機械がある」と書いてあるだけ。「一番分からないのは永瀬さんだと思うけど、一言も聞いてこなかった。机の前に座ったらもう、もう工具で機械をいじっていて。ただ、何かと聞かれても“何だか分からないもの”としか言えないんだけどね(笑)」とおっしゃる林監督に、「永瀬さんもその答えが予想できたから聞かなかったんじゃないですか(笑)。でも、真剣に、生涯をかけて機械に向き合っているのが見えました」と浅越。その意見に林監督は、「そうですね。演技って素晴らしいですよね」としみじみと言葉を紡がれました。

『GOOD YEAR』には絵を作る面白さがあったそうで、男女2人だけのシンプルな物語だけに林監督は、「絵と表情と演技だけで、いろんな物語を読み取ってほしい」とのこと。会場には30年来、林監督の作品の映像を撮影されている長田勇一さんもいらっしゃり、長田さんもスクリーン前に招いてのトークもありました。大スクリーンで『GOOD YEAR』をご覧になった長田さんは「月船さんの顔に髪の毛が…」と気にされていました。「CGで消せるから!」と林監督があっけらかんとおっしゃるにも関わらず、「女優さんにそういうことをしてはいかんと反省しております」とプロ目線でのご感想を。そのほか、プロだからこその見え方も教えてくださいました。

ここでお客様からの質問を募りました。前編も考えられているという構想に、「個人的には、『GOOD YEAR』の前編、後編は要らないと思いました」と率直なご感想を述べられた男性。このご意見に対して、「前編と『GOOD YEAR』は独立した2本なので、観るとまたご意見が変わるかもしれません。全く違う映画だから。でも、『GOOD YEAR』で出てきた男女は繋がっている、そんな話を作ってみたいんです」と、ご意見ありがとうと感謝されつつ、前編への期待を促されていました。

続いては、永瀬さんと月船さんをキャスティングした理由を教えてほしいと、記者の方からご質問が。「永瀬さんは話しやすい人。佐野史郎さんと永瀬さんは話しやすいお二人なんだけど、『GOOD YEAR』の設定は永瀬さんがぴったりだったので」とのこと。月船さんとは飲み屋でお会いしたことがご縁となったようです。「その時は離れた席で、お話してもいなかったのですが。月船さんは宝塚のご出身で、いい意味で派手で。退団後はそんなに化粧をした役はされていないので、一度宝塚に戻しちゃおうかなと。それが一番合っている水だろうし」と林監督。永瀬さんと月船さんは初共演、そのことも「変な予定調和が生まれずよかった」と、いい意味での緊張感がスクリーンから伝わってきたとご納得の様子でした。

林監督が構想中の『GDOD YEAR』前編。「2016年5月に撮影を始めると9月には編集ができるから…」と、「来年の『京都国際映画祭』に持って来られますね!」とプランも万全。「今日は(上映会に)誰も来ないかと思っていましたが、たくさんの方に来てもらいました。『京都国際映画祭』招待作品としてかかったことも嬉しかったです。今までで最大のスクリーンで、観客として観てもとてもいい映画だと思いました。来年、できれば前編を持ってここでまた会いたいと思います!」と林監督、新作に早くも意欲を見せられました。

一方浅越も、林監督と会話が弾んだことで「これは何かのオファーがあるかもしれない…!」と、トークショーで何かを掴んだ様子。小さくガッツポーズをしながら会場を後にしました。