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『時代劇は死なず ちゃんばら美学考』ワールドプレミア!中島貞夫監督らが作品に込めた想いを語る

2015年10月18日(日) レポート

10月18日(日)、よしもと衹園花月にて、中島貞夫監督によるドキュメンタリー『時代劇は死なず ちゃんばら美学考』がワールドプレミア上映されました。京都を中心に発展してきた時代劇映画、その中でも“華”とされるチャンバラを、歴史的変遷や評論家・俳優・殺陣師たちへのインタビューとともに徹底的に追究した本作。開映前の舞台挨拶には中島監督のほか、東映剣会の柴田善行さん、俳優の木村彰吾さん、映画史・時代劇研究家の春日太一さんが登壇し、浅越ゴエ司会のもと、制作の経緯や見どころについて語りました。

中島監督は、つめかけた多くのお客さんを前に「皆さんがおいでくださってこその映画祭。ありがとうございます」と感謝の言葉を。柴田さんは「いま、時代劇は減っているが、これを見せていただき、『もっと時代劇を大事にしていかなアカン』『もっと頑張らなアカン』と思いました」と決意を新たに。春日さんは「中島監督の作品に、私のデビュー作(『時代劇は死なず!—京都太秦の「職人」たち』)のタイトルをつけていただくなんて、とても名誉なこと」と、喜びとともに挨拶します。

「京都国際映画祭」実行委員長も務める中島監督は、「この映画祭から何が発信できるのかと考えた時、京都といえば時代劇の牙城、時代劇と言えばちゃんばらだ、と。なぜ今のように数少なくなってしまったのか、ちゃんばら映画にはもう可能性がないのか…そんな気持ちで徹底的にちゃんばらを分析してみようと試みた」と制作のきっかけを説明。作品冒頭では、まず日本映画の草創期、牧野省三監督をはじめ京都の人々がどのように映画を作っていったのか、なぜ京都で映画が地場産業として発達していったのか、その中でもなぜちゃんばらが中心になったのかを詳しく解説。その後、多彩なインタビューでちゃんばらの魅力とこれからを浮き彫りにしつつ、ラストは中島監督がメガホンをとった本格的ちゃんばらシーンへとなだれ込みます。

そのシーンで、殺陣に初挑戦したのが木村さん。「時代劇の経験はあるが、立ち回りは初めて。中島監督から『技術は気にしなくていい、思いっきりやれ』と言われ、当たって砕けました」と完全燃焼したそうですが、一方で「前夜は緊張のあまり眠れず、そのまま現場へ向かいました」とも話していました。

中島監督曰く、ちゃんばらは「斬る・斬られるの相互関係」で、“斬る側”“斬られる側”の両方に美学があるとのこと。“斬られる側”としてカメラの前に立ってきた柴田さんも、「斬る側と斬られる側のコミュニケーションは本当に大事。斬られる側も、ちゃんとお芝居しているんです」。さらに、「高橋英樹さんは、本番で睨まれると『うわっ!』となるほど怖い(笑)。高橋さんは殺陣師が手順を付けるのを聞いているだけで、手合わせなしで本番に入られるんですよ」など、カリスマあふれる時代劇スターの横顔もこっそり明かしてくれました。

また、中島監督は「春日さんのような若い世代からちゃんばらがどう見えるのかを聞くことも非常に貴重な機会」とコメント。そんな春日さんは、子ども時代から時代劇ファンとなり、「安室奈美恵さんと同い年なんですが、まわりがアムラーになる中、ひとり時代劇にハマりこんでいました」と告白。ゴエからその理由をきかれると、「面白くてかっこいい、純粋にそれでした」と即答していました。

最後は中島監督から「ちゃんばらは、消えてはならない日本の文化。保つために頑張らないといけない。それが作品を作った想いです」と改めてメッセージ。「ご覧いただいた後は忌憚のないご意見をいただき、我々の糧としたい。よろしくお願いいたします」と締めくくると、客席からは大きな拍手が起こっていました。