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能勢伊勢雄監督、おかけんたがアート表現「ハプニング」についてレクチャー『ニューズリール・大阪ハプニング・ドキュメント』

2015年10月16日(金) レポート

10月16日(金)、立誠シネマプロジェクトにて、1969年と1971年に撮影されたアート表現「ハプニング」の貴重映像などで構成した『ニューズリール・大阪ハプニング・ドキュメント』の上映後、能勢伊勢雄監督がレクチャーを行いました。

京都国際映画祭のアートプランナーも務める、MC・おかけんたに、「アートカルチャーの生き字引」と紹介された能勢監督は、まず「その状況の中に表現をダイレクトに突っ込む。そうすると街中で、予定調和ではない変化が起きる。それが、ハプニングなのです」と説明。

作品には、大阪梅田から地下街を経て御堂筋南下に行き着く中で、突然アクションを起こし、そこで街がどういう反応が起こったかを、記録映像として収めている。

おかから「ちょうど大阪万博(1970年の日本万国博覧会)があった時代ですね。能勢さんにとっては、当時はどういう時代でしたか」と尋ねられると、「各国の表現者たちが、それぞれの媒体で活動していた。中でもダダカンは、オールヌードで大阪万博を歩いて逮捕されました。また、太陽の塔のアイジャック事件もありました。あの犯人の男には学生運動の余波というメッセージがありましたが、ダダカンはただただ裸でそこを歩いた。そこで起きる変化こそが、ハプニング」と語りました。

さらに持参したスライドで、当時のハプニングに関する記事をスクリーンに映しだし、それぞれの作品を解説。1968年の映画雑誌・キネマ旬報でのアングラ特集で掲載されていた、ゼロ次元による「クレイジーラブ」の写真が登場すると、おかも「傍観者の表情もまた面白いですね」と感心しました。

能勢さんは、小野洋子(オノヨーコ)が、自分の服を観客にはさみで次々切らせていく「カット・ピース」も紹介。
「その映像を観たとき、非常に感動しました。下着も切られて、残るはパンティーしかない状況になった小野さんに対し、観客はそこで拍手を贈るんです。『小野洋子、もういいよ』と。彼女を裸にしてやろう、と挑んだ人たち(の気持ちや状況)が変化する瞬間でした。まさに、ハプニング。現実の社会に表現を突きつけていくこと、それがいかに大事かを、当時その映像を観て考えました」

「ハプニングは一つの状況を、一つの行為で変えてしまうもの」と言う能勢監督。
おかは「時代によって脈々とアートは受け継がれて来たが、いつしかそれがパフォーマンスになってしまった。映画監督の中島貞男さんが、かつての時代劇には死生観が流れていたが、『水戸黄門』が勧善懲悪に変えてしまったとおっしゃっていました。現代のアート表現は、そのお話に繋がると思います。だからこそ僕は、これからも京都国際映画祭で、能勢さんの脳みそを丸裸にしていきたい」と、今後も能勢作品の魅力を伝え続けていくことを力強く宣言しました。