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海外メディアも注目!日本が世界に誇るパフォーマンス「チャンバラ」の魅力に迫る!

2015年10月17日(土) レポート

京都が誇る歴史的建築物(重要文化財)でもある京都文化博物館 別館ホールでは、本映画祭実行委員会事項委員長でもある映画監督・中島貞夫監督作品『時代劇は死なず ちゃんばら美学考』展~あの名作時代劇の刀剣が今ここに~の作品完成を記念し、作品中にも登場する様々な名作の小道具として使用された貴重な刀剣や甲冑などの特別展示を実施。
10月17日(土)には、同ホール内にて、中島貞夫監督を招いてのトークイベント&東映剣会(トウエイツルギカイ)による殺陣パフォーマンスが行われました。

まずは中島監督の「よーいスタート!」のかけ声と共に3人の男性剣士による演技が勢いよくスタート!
続いて袴姿の女性剣士2人が登場し、終盤5人が絡む演技では、鬼気迫る表情も迫力たっぷりの迫真の演技が披露されました。
間近で観る殺陣の迫力とその文句のない格好良さに、会場からはどよめきも。
東映剣会は、昭和27年に殺陣技術の向上、発展と継承を目的に発足し、市川右太衛門をはじめとする銀幕のスターたちの絶大
なる信頼の元、最盛期には100人を超えるメンバーが在籍していた殺陣技術集団です。
「斬る側と斬られる側の微妙な間合いを取るのが立ち回りの難しいところ。息がぴったり合わないといけないので、ゆっくりとした動きのほうが難しい」と中島監督。今回はスローモーションなども取り入れ、様々な要素を含む奥深い殺陣の魅力を短い時間に凝縮した貴重な演技となりました。
熱演終了後は、司会進行のおかけんたが5人の剣士に今日の演技の出来や経歴などについて質問を。
博物館で殺陣の演技をしたのは全員初めてだったとのこと。真剣な演技中とは違った素顔を見せてくれたり、練習量についてなど貴重な話を聞くことができました。

続いて、中島監督と共に株式会社高津商会代表取締役社長・高津博行氏を迎え、フリートークへ。
トーク会場の後ろに展示されている、アートプランナーおかけんたがプロデュースした8つの時代劇に関する小道具や衣装について、それらを手がけた高津商会社長・高津氏による解説が行われました。
展示されているのは、必殺仕事人シリーズや桃太郎侍、座頭市、旗本退屈男、子連れ狼など比較的若い世代にも知られる時代劇として馴染みの深いものばかり。

「最近では、テレビでもスクリーンでもチャンバラが減ってしまったが殺陣は、日本人にとって世界に誇れるパフォーマンス技術」と語る中島監督は、京都国際映画祭ということで、映画とアートの関係にも触れ、「107年の歴史ある京都映画界では、時代劇をつくり続けてきた。1000年の都の歴史がある京都には、伝統芸能、伝統工芸というアートがある。京都ならではの時代劇と道具(アート)の素晴らしい関係性を是非みなさんに実際に目で見て感じていただきたかった」と力を込めました。

展示品の中には、当時昭和30年代で400万の総蒔絵の刀など美術品同様の価値のあるものも。
「スターの刀は1度きり。他の人に貸すことができないので、どんどん新しく作るため数増えていくんです」と高津社長。もともと道具屋だった高津商会の倉庫には現在も1万以上の刀が保存されていて、「ラストサムライ」では2000本もの刀を使用したといいます。小道具や衣装は時代を象徴したもので、何十年たった今でも綺麗に保存されているとのことです。
『写真』のリアリティと『歌舞伎』の様式美を合わせ、リアリズムを追求し、できるだけ本物志向の動きの激しさを目指して、
日本映画の父といわれる牧野省三氏が創りだした「チャンバラ」。牧野省三氏が映画にチャンバラを取り入れてから、日本映画のほとんどの小道具は高津商会が手がけているのです。

そこで、おかけんたから「昔は本身(鉄でつくった本物の刀)を使ったこともあるのですか?」と質問。
「昔の俳優は、日頃から鍛錬を繰り返していたので、本身を使うこともあったのですが、本身を使うと演技としては、マイナスになる。怖いでしょう、やっぱり。日本力の摩訶不思議な魔力にはかなわない。実際に事故もおきたという本身はやはり危険が伴います。いかに本身らしく見える刀を作れるかという動きの中、高い技術が生み出されたのです」と中島監督。

ここで高津社長から実際の刀を見せていただくことに。「樫の木で身をつくり、接着剤のかわりに卵の白身を塗って『金貝』というすずの合金を貼りつけているんです。弊社では数名の職人が貴重な技術を継承しています」
「お客さん、実際に触ってみませか?」というおかけんたの提案で、刀に触れて、その感触を確かめるお客さんたち。
「軽い!」という声があちらこちらから起こり、その繊細な仕事と完成度の高さに誰もが驚いた様子でした。

最後に、伝統工芸を元に生み出される道具や時代劇の歴史的変遷を踏まえ、「チャンバラというものはどういうものか」という
テーマについて中島監督は、「チャンバラとは、極めて日本的な精神性が加わったパフォーマンス。華麗な踊りのような立ち回りから、黒澤映画のような血しぶきが飛び散るものまで大きく、美しいものと激しいものの2種類にわけられます」と解説。
「チャンバラは、自身の肉体のみで表現できる極限のアクションであり、ひとつひとつのシーンに力がある。技術に頼るのではなく、役者や表現そのものに力がないと成立しないものなのです。生きるか死ぬかという日本ならではの死生観があらわれている優れたチャンバラは悲劇が多く、常に斬る側と斬られる側のドラマ性が裏にあります」と奥深さを語り、
「近年ではそのような日本的なカタルシスが忘れられているのでは」と評しました。

最近では、歴史や日本刀に興味をもつ若者や女性増えている中、京都国際映画祭といういい機会に、京都から世界に何を発信していけるのかと考えた中島監督は、「日本のチャンバラの本質や美学について、さまざまな側面から描いた『時代劇は死なず ちゃんばら美学考』で、時代劇やチャンバラの歴史、精神性はもちろん、京都の伝統工芸についても楽しんでいただきたい」と語りました。

そして、トークイベント終了後は、マスコミによる簡単な質疑応答が行われ、その中で
「年配の方が多かったですが、多くの方に来場いただき、関心を持っていただけたようでよかったです」
とほっとした様子で、安堵の表情を浮かべる中島監督。

海外メディアや外国人のお客さんも目立った会場でしたが、質疑応答の中で、マレーシアの記者の手が挙がりました。
「マレーシアでは現在、日本の時代劇や殺陣が大人気なんです。マレーシアの監督とコラボレーションして映画を作ることに興味はありますか?」との質問に中島監督は、
「是非、実現できるものならやってみたい。興味をもっていただけてうれしいですね」と返答。海外の注目の高さも感じさせた一幕でした。