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『京都国際映画祭2015』三船敏郎賞を受賞! 仲代達矢さんが主演映画『ハチ公物語』の舞台挨拶に登壇!

2015年10月15日(木) レポート

10月15日に開幕した『京都国際映画祭2015』。オープニングは、特集上映「Special Screening in KYOTO」の1作品である「ハチ公物語」がよしもと祇園花月で上映されました。大学教授である主人が亡き後も、渋谷駅で帰りを待ちつづけた忠犬ハチ公の心温まる実話を元に、人と動物との交流を描いたドラマ作品で、仲代達矢さん、八千草薫さん、柳葉敏郎さんほかが出演しています。

舞台挨拶では、『京都国際映画祭2015』で三船敏郎賞を受賞し、本作品の主演を務めた仲代達矢さんが登壇。清水圭の司会進行のもと、撮影秘話などを披露されました。

まずは、仲代さんからご挨拶がありました。

「私は18歳の時から芸能界に入り、今年の12月13日で83歳になります」との第一声に会場から大きな拍手が起こりました。仲代さんは続けて「60年、この仕事を続けているので、もうそろそろだとは思っていましたが、今日は私の最も尊敬する、今は亡き三船敏郎さんの『三船敏郎賞』を『京都国際映画祭』でいただきました。私の先生というべき三船さんの賞をいただきましたので、もう少し頑張ろうと思っております」と感慨深く語られました。

『京都国際映画祭2015』のオープニングセレモニーでレッドカーペットを歩いた時のご感想を清水が尋ねると、「感動しました」と仲代さん。「『京都映画祭』は以前からありますが、去年からスケールが大きくなってびっくりしました。昔の『京都映画祭』では、勝新太郎さんの『人斬り』で助演男優賞をいただきました」と思い出話も飛び出しました。

1987年に仲代さん主演で公開された映画『ハチ公物語』は配給収入20億円と、その年の配給収入1位を記録した大ヒット作品。そして2009年にハリウッドでリメイクされ『HACHI 約束の犬』と題して日本でも上映されました。

『ハチ公物語』出演オファーの際のお話を伺いました。

「当時私は、ちょっとまだ売れておりまして(笑)、毎月台本が3冊、4冊、届きまして、その中から“これをやりたい”と選ぶというような、ちょっと贅沢というか傲慢な映画出演をしておりました。実は、私は動物があまり好きではなかったんです。でも、神山征二郎さんが監督で、新藤兼人さんの脚本がとても素晴らしいもので、“よし、これをやらせていただこう”と思いました。その前には、市川崑監督の『吾輩は猫である』(1975年、芸苑社)にも出させていただいておりました。大体、動物と子供が出ている映画の場合、監督は子役さんや動物がうまくいくかを気にしていて、大人の役者はどうでもいいんですよね(笑)」と笑いを誘います。

そして『ハチ公物語』でハチ公を演じた犬についての裏話もありました。

「ハチ公はとてもいい秋田犬でした。僕の腿をポンポンと叩くとハチ公がついてくるようにするため、訓練もしました。最初は全然、言うことを聞かなくて、トレーナーの方が“仲代さん、四つん這いになってください。犬は四つん這いです。四つん這いになって一緒に遊んでいるとだんだんなついてきますよ”とアドバイスをくださり、泥だらけになってハチ公と遊びました。そして20日くらいかかって、やっとなついてきたんです。太ももを叩くと僕の横についてきたんですね。それがうれしくて、かわいくもなりました。撮影の途中から、素晴らしい作品になるなと予感しました」

裏話は続きます。「これ、今から観る方に言っていいかな?」とご配慮しながらも、「昔の渋谷駅のセットは、空き地にオープンセットを立てて、そこで撮影したんです。電車が走ったりもして。やっぱり犬だから言うことを聞かない日もあって。ハチ公の主人公である上野先生が学校内で亡くなられた日の撮影した日、いくら腿を叩いてもパーッと逃げてしまうんです。どうしても僕についてこなかった。あれは不思議でしたね。また、1日だけですけど、ハチ公についてきてもらうために、脱脂綿に雌犬のにおいをつけたものを手に持っている日もありました」と仲代さん。また、中学1年生の頃、犬に右ほほを噛まれた経験から犬が怖かったそうですが、『ハチ公物語』に出演したことで、怖くなくなったともお話されました。

「愛する者への喪失感や忠誠心に関しては、どう思われますか?」という清水の問いには、「人間も犬も動物も同じだと思います、『ハチ公物語』の撮影が終わって犬と別れた時も喪失感がありましたね。“これからもう会えないんだ”という。犬をお飼いになっている方は、不幸にも犬が亡くなったら、相当の喪失感があると思います」としみじみ、語られました。

最後には、「今日の三船敏郎賞でこのマフラーをいただきました(笑)」と嬉しそうにお話しされる仲代さん。「この映画は30年前の映画ですから、仲代達矢もずいぶん若かったです。私どもは日本で一番小さい役者塾である『無名塾』をやっていまして、40年続いています。そこの若い子たちが私の昔の映画を観て“仲代さんですか!?”って言うんです」と笑いを誘い、「ぜひ楽しんでください」と会場を後にされました。