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『WINDS OF GOD』上映後に奈良橋陽子監督らがトークショー!故・今井雅之さんが脚本を手がけた『手をつないでかえろうよ〜シャングリラの向こうで〜』制作発表も

2015年10月16日(金) レポート

今年5月、54歳の若さでなくなった俳優・今井雅之さんの代表作『WINDS OF GOD』が、10月16日(金)、よしもと衹園花月にて上映され、終演後、奈良橋陽子監督をはじめ今井さんゆかりのメンバーによるトークショーが行われました。
同作は舞台として大成功を収め、アメリカなど海外でも公演された名作の映画版。まずは奈良橋監督と、舞台版に出演したなだぎ武によるトークからスタートです。

奈良橋監督は、「5年間かけて作った映画です。映画にするのを待っていられず舞台を先にやり、アメリカに招待されロスやニューヨーク、国連まで行きました。思い出がたくさん残っています」と挨拶。久々にスクリーンで本作品を目にし、「若いですね…昔は本当に英語もぜんぜんできなかったんですが、本当にガッツの人で」と当時に思いを馳せます。

なだぎは2012年に舞台「THE WINDS OF GOD」に出演。それまで後輩の陣内智則や宮川大輔が出演しており、「稽古の前に肉練、いわゆる筋トレがあると聞いていた。でも、せっかくオファーをいただいたんで、一度自分に鞭打つためにやらせていただこうかなと思い受けました」。

トレーニングは想像以上の厳しさで、「こんなとこ来るんじゃなかったと思いました(笑)」と懐かしそうに振り返ります。朝10時から2時間のランニングを経て、さらに筋トレを2時間以上。「もうクタクタですよ(笑)。顔は痩せていくんですが、体だけバキバキになっていく。でも、体が慣れるとできるようになってくるんですね。特攻隊の話なので、舞台をやってみて『(厳しいトレーニングは)あ、そういうことか』と腑に堕ちました」と話しました。

そんな今井さんはサバイバル旅行を敢行するなど、自分にも常に厳しい人だったそう。奈良橋監督が「亡くなっても彼の情熱は生き残っていて、応援したいという方たちがまわりにいらっしゃるのが何よりうれしい。
彼がそばにいるという感じがします」と現在の心境を明かすと、なだぎも「今井さんが残したものが受け継がれている。筋トレなどのつらいこと、いやなことが、自分のエネルギーになっている。あの人が伝えたかったことはこういうことだったのかと、じわじわわかってきました」と応えていました。

続いては、なだぎに代わって川平慈英さん、プロデューサーの野村祐人さんが登場し、今井さんが生前より映画化を構想していた『手をつないでかえろうよ〜シャングリラの向こうで〜』の制作を発表! 
奈良橋監督によると既にクランクアップし、これから編集に入る予定で、来年5月28日、今井さんの一周忌に公開されることが決定しているそうです。

「去年の終わりぐらいに(今井さんから)電話をもらい、この舞台を映画化したい、僕は絶対に出たいから監督してほしいと言われた」と奈良橋監督。結局、出演がかなわなかった今井さんに代わって、主演を務めたのが川平さんでした。
「吉田あつしさんが長男で、まーちゃん(今井さん)が次男、僕が三男という感じ。大学3年の頃からずっと一緒、ファミリー感満載です。彼(今井さん)が脚本の舞台も3本やらせてもらいました」という、まさに兄弟のような関係だったふたり。「生きる、生きてこそすべてというエネルギー。彼の作品はぜんぶ、生き抜こうよというのがメッセージでした」と、今井さんの人となりを語ります。

大切な人を失った男性を主人公に、「生と死」という重厚なテーマを描いた本作品。「ただ、彼らしくないところが1カ所あったんです。最後に死んで天国に行くというのが、雅之らしくないなと思った。何かを予感していたのかもしれませんが、リアリティを追求していくと死ぬ状況じゃない、だから最後は生き抜いて行こう、と。彼も納得してくれました」(奈良橋監督)。

この後、思わず内容を詳細に語りそうになってしまい、川平さん、野村さんが慌てて止めに入るひと幕も…。最後は「慈英は本当に素晴らしい主役でした。雅之も喜んでいると思います」と改めてコメントし、トークを締めくくりました。

終演後には奈良橋監督、川平さん、野村さんが出席しての囲み会見が。昨年、監督してほしいとオファーを受けたいきさつについてきかれると、奈良橋監督は「今思えば、何か覚悟があったのかもしれない。もう一度、一緒にやりたいというのがすごくあったんだと思います」。
一度だけ、3月に名古屋で桜のシーンを撮影した時に、今井さんも現場を訪れることができましたが、カメラの前に立つことは叶いませんでした。それでも最後の最後まで、出演を諦めなかったそうです。

川平さんへの主演オファーは、今年の春、吉田あつしさんとともに奈良橋監督の自宅に呼ばれ告げられました。「3人で話して、雅之は相当よくない状態だ、と。何かあった時は雅之のOKをもらっている、とも言われ、僕は涙が出そうなぐらいうれしかった。雅之のパートを僕がサポートできるというのは素直に喜びであり、感謝の念でいっぱいでした」と川平さん。

その後、今井さんに会いに行った際は、しゃべれる状態ではなかったため、「ありがとうとまだ言えてないんです。映画とともに雅之に届けられたら」と作品に込めた思いも明かしていました。
一方、今井さんは川平さんに全幅の信頼を置いており、奈良橋監督曰く「代わりに慈英にやってもらえるということを喜んでいた」とのことです。

キャストについては、「まだヴェールに包みたい」と野村さん。川平さんによると「とんでもない人たち。この人たちと芝居ができるなんて」と感激するほどの顔ぶれだとか。キャスト、スタッフとも今井さんにゆかりのある人ばかりで、全員の思いがひとつになり、すべてが手作りの現場で制作されました。野村さんは、「この映画を世に出すことで、雅之の思い、生命力が伝わる気がする。これは作らなきゃいけなかった」と力を込めました。

また、川平さんは撮影中、左のポケットに今井さんと撮った写真をしのばせてお芝居をしていたと告白。最後の撮影カットは今井さんの数珠をつけた川平さんの手元のアップから始まるなど、まさに「今井さんとともに」演じきった役柄、作品となりました。

亡き今井さんの情熱と魂を、仲間たちが引き継ぎ作り上げた『手をつないでかえろうよ〜シャングリラの向こうで〜』。来年の公開を、どうぞお楽しみに。